日本屈指の育成型クラブ・セレッソ大阪が踏み出す新たなるステージ

高円宮杯チャンピオンシップ初制覇で育成クラブの本領発揮
2010年南アフリカ・ワールドカップMVP&得点王のディエゴ・フォルランの獲得などで初のタイトル獲得が期待されていた2014年のセレッソ大阪。しかし、トップチームは今季J1でまさかの17位に終わり、5シーズンぶりのJ2降格を強いられてしまった。

ジェフユナイテッド千葉、ジュビロ磐田といったかつて名門クラブを見ても分かる通り、いったんJ2に落ちるとJ1にすんなり復帰するのは難しい。いかにチームを早急に立て直すかが彼らに課せられた最重要テーマと言える。

クラブはすでに2015年シーズンに向けての準備を本格的に始めている。2006年に鹿島アントラーズを指揮したパウロ・アウトゥオリ監督を招聘。FC東京や大宮アルディージャ、U-20日本代表などの監督を歴任した大熊清氏も新強化部長に迎えた。昨季までキャプテンだった藤本康太やアカデミー出身の丸橋祐介も契約を延長。クラブ再建に尽力することになった。

そんなセレッソだが、やはり力強いのは、若い力が続々と育っていること。12月14日に埼玉スタジアムで行われた高円宮杯U-18サッカーリーグ2014チャンピオンシップで、彼らは柏レイソルU-18を1-0で撃破。ユース年代初の頂点に輝いたのだ。このチームはシーズン途中まで大熊裕司監督が率いており、走力を重視したスタイルを徹底的に追求してきた。大熊裕司監督が暫定的にトップ監督に就任してからも、その哲学を村田一弘コーチが引き継ぎ、選手たちにピッチ上で表現させてきた。こうした成果が強豪揃いの高円宮杯プレミアリーグ西日本制覇につながり、さらに東の雄・柏を倒す原動力となったのである。

この優勝チームから、キャプテンマークを巻いていたDF温井駿斗、MF沖野将基、MF阪本将基、MF西本雅崇、MF前川大河の5人がトップ昇格を果たすことが決まっている。この人数は、南野拓実、秋山大地、岡田武瑠、小暮大器(徳島=来季復帰)が昇格した2013年シーズンよりも多い。それだけ優れた人材が数多く育っているのだ。

セレッソは市民が育成組織をサポートする組織である「ハナサカクラブ」を2007年に立ち上げるなど、他クラブに先駆けて育成のテコ入れを図ってきた。その成果として、90年生まれの柿谷曜一朗(バーゼル)、山口蛍、丸橋、91年生まれの扇原貴宏、永井龍、92年生まれの杉本健勇、95年生まれの南野、96年生まれの丸岡満(現ドルトムント)らがアカデミーから大きく成長し、日の丸を背負うレベルに達している。その前の世代を見ても、88年生まれの乾貴士(フランクフルト)、89年生まれの香川真司(ドルトムント)、清武弘嗣(ハノーファー)が20歳前後の若い時期を過ごし、めきめきと力をつけた。こうした目覚ましい実績を知ったガンバ大阪ジュニアユース出身の本田圭佑(ミラン)が「どうしてセレッソからこんなに素晴らしい若手が次々と出てくるのかをぜひ知りたい」とコメントしたほどだ。

ただ、優秀な選手ほど他クラブからの引き抜き対象になりやすい。すでに柿谷、丸岡は欧州へ羽ばたいているが、山口、南野もその可能性があると言われている。今季途中から強化本部長の重責を担った宮本功・セレッソ大阪スポーツクラブ代表理事(育成責任者)も「毎年のようにトップで活躍する人材を送り出すのは本当に難しいこと」と頭を悩ませていたが、輝かしい実績が今も毎年のように続いているのは特筆すべき点だろう。

こうした若手がタフなJ2に身を投じることは決してマイナスではない。実際、香川も2009年J2で得点王に輝き、乾も切れ味鋭いドリブルに磨きをかけた。柿谷もJ2だった徳島ヴォルティスにレンタル移籍されたことで選手としても人間的にも劇的な変化を見せている。

加えて言うと、今季J2で走力やハードワーク、攻守の切り替えを重視した湘南ベルマーレ、松本山雅、モンテディオ山形の3チームがJ1昇格したのを見ても、インテンシティー(機動力)の高いJ2では献身的な走りをコンスタントに出せないとやっていけない。そういう意味でも、ユース年代で鍛え抜かれたセレッソのアカデミー出身者が活躍できる可能性は大きいと言えるのではないだろうか。

アウトゥオリ監督も鹿島時代に内田篤人(シャルケ)を大きく伸ばした通り、若手育成には長けた指導者。百戦錬磨のブラジル人指揮官の下で、若きセレッソがどのような変貌を遂げるのかが、今から楽しみだ。


文/元川悦子
1967年長野県松本市生まれ。94年からサッカー取材に携わる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォロー。特に日本代表は練習にせっせと通い、アウェー戦も全て現地取材している。近著に「日本初の韓国代表フィジカルコーチ 池田誠剛の生きざま 日本人として韓国代表で戦う理由」(カンゼン刊)がある。